動画共有サイトで学ぶメディアのしくみ

目的

本教材は、何が正解かを学ぶものではなく、答えがひとつに決まらないような課題に対して議論する能力を育むことを目的としたものです。 その主題として、動画共有サイトのコメントについて考えていきます。 コメントを読み解くことで人々の価値観に触れ、自分個人とは違う価値観が身近に存在していることを学びます。そのことを踏まえつつ、気持ちよくインターネットを使うことができるように自分たちでルールを考えることで、ルールの必要性やマナーの重要性を感じ取ることができます。既存のマナーやルールを押し付けるのではなく、自分たちで考えていくことを重視した学習活動です。 自分たちが出したルールも万能のものではなく、今後も利用していくことになるインターネットをどう活用していくべきか、考え続けていく思考力を身に付けることが重要です。

実践の流れ

  • 動画共有サイト利用状況を確認

まず、教材として準備されている疑似動画共有サイトを提示してください。

→疑似動画共有サイトのリンク

この時に、動画共有サイトがどのようなものかを説明します。 「動画共有サイトは誰でも動画を公開することができ、利用者は自分の見たい動画を楽しむことができるサイトである」 、そして提示しているページの内容が、「自分の好きなロックバンドを検索するとミュージックビデオが動画共有サイトの公式チャンネルに公開されている」ということを説明します。

それから、動画共有サイトはどのような情報から構成されているのかを整理します。 「動画があること」「視聴している動画に関連している動画が脇に表示されること」「再生数が表示されていること」「他のSNSなどで共有できるリンクがあること」「コメント欄があること」などがあげられます。ここで、学習者にこういった動画共有サイトを使ったことがあるか、コメント欄に書き込む経験をしたことがあるかを問いかけます。この問いかけにより、この動画共有サイトが身近な存在であることがわかります。

今回の授業ではコメントについて勉強することを学習者に伝えてください。

  • コメント分析

ワークシートに移ってください。 問1をやります。「よいと思うコメントには○、いやな気持ちになるコメントには×」というものです。「悪いと思うコメント」ではなく「いやな気持ちになるコメント」という表現により、自分の価値観でコメントを判断することができます。 例の説明をします。純粋な好意を示すものであり、誰しもが不快に思わないようなコメントを例に出しています。右の空欄にはなぜそう思ったのかの理由を記述してもらいます。

  • 分析結果の発表

学習者が分析し終わった時を見計らい、分析の結果を発表させてください。流れとしては、コメントを順番にひとつずつ取り上げ、○か×かを聞き、その理由を述べてもらいます。抜粋したコメント1つ1つに学ぶ所があります。 学習者に理由を述べてもらった際に、Good/Badの評価が理由にあがる場合は、その時にその特性について説明してください。Good/Bad数の特性とは、「Good/Bad数は確かに基準にはなるかもしれないが、投稿日にも関係がある。昔のコメントはたくさんの人に見られていると考えられるのでGood/Bad数が多くなるが、最近の投稿はあまり人に見られていないからGood/Bad数も少ないと考えられる」ということです。 この分析により、人の価値観が反映された様々なコメントがあり、それを受け取る側にも様々な価値観が存在していることを学びます。

1.「このMV好きーー!!!本当に歌上手だなあ〜」
全員一致で○になることを想定しているコメントです。 純粋に好意を示すコメントで相手に不快感を与えることのないやわらかい口調で述べています。

2.「批判している人いるけど、この曲の良さがわからないとか(笑)かわいそう(笑)」
○か×か分かれると想定しているコメントです。 好意は示しているものの、「かわいそう(笑)」が嘲笑を感じ取れる可能性があります。

3.「ヘタクソ!解散しろ!!」
全員一致で×になることを想定しているコメントです。 口汚く罵っていることから、不快に思う人が多いと思われます。

4.「ライブ行ったらめっちゃ面白かった!トーク力もそこそこあるし。ライブに行ったことのない人はこの曲きいても意味ないよ。」
○か×か分かれると想定しているコメントです。 好意は示しているものの、「トーク力もそこそこ」という上から目線、ライブに行ったことのない人を批判する言葉が不快感を抱く可能性があります。

5.「チャラチャラしたアイドルなんかよりも、こういうロックの方が好きだな」
○か×か分かれると想定しているコメントです。 他のジャンルを否定し、自分の好みのジャンルを肯定しているため、他のジャンルが好きな人は不快感を抱く可能性があります。

  • ルール作りと発表

コメント1つとっても様々気持ちがわき上がることが分析でわかりました。 問2として、多くの人が気分よく楽しく使えるように、どんなルールがあったらよいかをグループを作って考えてもらいます。そのルールの理由を個別に考えさせた後、グループで一番良いと思うルールについて話合い、発表させます。また、他のグループのルールを見て、よい点を考えてもらいます。 そのルールにも良い所と悪い所があることを教師側から指摘します。例として、 以下のようなものがあげられます。

・暴言をしたコメントは消される/書き込めない→情報規制の可能性

・そういうコメントがあるということを動画共有サイトのトップページに書く→何を言っても良いのか/共有サイトに人が集まらなくなるのではないか

・思いやりを持ってコメントする→人の思いやりの基準が不明

  • まとめ

最後に、問い3として、本日の授業のまとめを書いてもらいます。 ワークシート多彩な人々の価値観の存在を理解した上で、動画共有サイトの活用(相手を意識した情報の読み解き、思いやりを持った発信)やルール作りについて考え続けていくことが大事だということを確認してください。